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5月。緑萌える季節。 ショートカットの髪も、軽やかにして、爽やかな高校生活2年目。 のはずだった……。 私は今、 重い体を引きずって家に帰りつく。 自分の部屋に行くエネルギーすらもうない。 カバンを置き、リビングのソファに腰をおろす。 ふとローテーブルを見るとメモがある。 『詩乃(しの)ちゃんへ、お帰りなさい。パートに行ってきます。おやつは冷蔵庫のプリンを食べてね。母より』 お母さんいないのか……。 いたらいたで、私を見て「どうしたの?」とか聞かれて面倒だけど。 学校での出来事が思い出される。 もう嫌! 耐えられない! クッションに顔面を押し付ける。 涙が、あふれる。 高校2年生になってクラス替えがあった。 1か月たったところで私にたいするいじめが始まった。 (たま) (あずさ)をボスとした不良グループだ。 タマなんて、猫みたいな可愛い名前をしているのに、やることは陰湿だ。 私の靴を隠す、黒板に悪口、教科書の落書き……その他いろいろ。 くだらない嫌がらせの数々。もういい加減にして! クラスの他の生徒は、私をいじめてる、わけじゃないけど。無視してただ見てるだけ。みんなタマが怖いのだ。 今日の事だ。 私は、タマに体育館裏に呼び出された。 タマは、野ざらしのパイプ椅子に座ってヘラヘラ笑っている。 私を見つけるとタマグループの5人が、左右から腕を掴む。 何をされるかわからないから、怖い……。 そのままタマの前へ。 「な、なんですか……」 ビビる私。 「詩乃、ちょっちお願いがあるんだけどなあ」 タマは、ヘラヘラ顔で言う。 「な、何」 「駅前の本屋にさあ、欲しい本が何冊かあるんよ。あれ買ってきてよ。代金は後で払うからさあ。五千円」 「え……。五千円なんてお金持ってないです……」 「ほんじゃあ、あれだね。こっそり本だけでも持ってきて」 「え、それって、万引き?」 「できないなら、いいし。他の奴に頼むから。誰にしようかなあ」 「それはやめて…ください。わかりました。あ、明日買ってきます」 「明日ぁー、まあ、しょうがないか。じゃあ明日な。このことは親や先生に言うなよ」 タマは、そう言って、私に顔を近づける。これが怖い。 そんじゃあな、と言ってタマグループは帰っていった。 私は、どっと力が抜ける。 どっちにしても、なんとかしなければ、私の代わりに他の友だちがいじめられる。 誰も私を助けてくれないけど、他の人がいじめられるのを見るのも嫌だ。 でも五千円なんて……。 貯金とかはあるけど、ここでお金を出したら、絶対次は一万円になるんだ。 どうしたらいいの。 クッションに顔を埋める。
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