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⑤
ハッと気が付くと、わたしは、ソファで寝てた。
「あら、目が覚めたのね。もうすぐお夕飯にするから着替えてね」
お母さん帰ってたんだ。
エイトは? テレビの前でお座りしてる。二ユースを見てるし。
さっきのは夢?
わたしは、洗面台の鏡で自分の顔を見た。
歯をむき出して見る。
「牙なんてないじゃん」
指先を見る
「爪なんてないじゃん!」
袖をめくって腕を出して見る。
「筋肉なんて全然ないじゃんかあ! やっぱり夢かあ……」
わたしは、エイトを見た。お座りをしてこちらを見ているよ。
『夢じゃないよ』
エイトがしゃべった?
『さっきと同じテレパシーさ。ぼくと、詩乃ちゃんは頭の中でおしゃべりができるんだ』
『そ、そうなの』
わたしも、エイトを見ながら声を出さずに頭の中でしゃべってみた。
『上手、上手。できるじゃないか』
ちょっと待ってよ、エイトはわたしをバカにしてるの。
『バカになんかしてないよ』
え?
『今のは、テレパシーじゃないよ。わたしが、勝手に思っただけの事なのに、それもわかるの?』
『うん』
うへ。うっかり変な事、考えられないよ。
『それで、エイトはわたしの知能になったの?』
『うん。詩乃ちゃんは、とっても賢いね』
『でもわたしは、牙も爪も筋力もないよ』
『そうみたいだね。ちょっとした、間違いかな。他の能力と交換したのかもしれない』
ここでわたしは、ブチ切れた。
「はあ? ちょっとした、間違い? エイトの嘘つき! 取り換えっこできてないじゃん!」
大声で怒鳴った。
「わっ! びっくりした。なあに詩乃ちゃん、小さい子みたいな大きな声出して。あなた高校生でしょ。落ち着いてよ」
お母さんのその声を聞いて、ハッとした。小さい子みたいな……。犬の知能はたしか小学生ぐらいっていったよね。
これが今の私の知能なんだ。
『ねえエイト、マジでわたしにはどんな能力があるの?』
『わかんない。けど、そのうち何か変化があるはずだよ』
「いやあ! もうわけわかんない!」
わたしは、自分の部屋のベッドに飛び込んでまた、大泣きした。
そのまま寝たみたい……。
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