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⑧
誰かが靴箱で、わたしが靴の臭いを嗅いでいるのを見てたんだ。
それをからかってる。
いつものわたしなら、教室を飛び出してトイレで泣いてた。
でも、今日は違う。
わたしは、黒板にあったチョークの臭いを嗅いだ。これと同じ臭いを捜すんだ。
くんくん。
わかった! これもタマグループの舟虫さんの方から臭ってくる。わたしは、舟虫さんに近づいて、手の臭いを嗅いだ。
くんくん。
「何すんだよ、キモイな」
舟虫さんは、手を引っ込める。
でも、もうわかった。同じチョークの臭いがする。
わたしは、舟虫さんを指さして、
「舟虫さん、わたしの上靴をゴミ箱に捨てたり、黒板に変な事を書くのはやめてよね」
きっぱりと言い切ってやった。昨日までのわたしとは違うんだ。
エイトの犬としての闘争心もわたしの心の中で味方をしてくれてる!
「なんだと、コラァ! 証拠でもあんのかよ」
「あるよ、臭いだよ。わたしは、犬だもんね」
黒板を指さして言ってやった。もっともっと言ってやった。
「あなたもかわいそうね。玉さんに使われて」
「何!」
これにはタマが怒った。
立ちあがって、わたしを掴みに来る。わたしは、ちょっとさがるつもりだったんだけど、ひと飛びで2メートルぐらい離れていた。これもエイトの能力だ。腕じゃなくて足の筋力がアップしていたんだ。
「待てコラ! オイ!」
待つわけないじゃん。ダッシュして教室を出てやった。
授業の時間になって、教室にもどると、黒板の落書きが消えている。
先生に見つかると、いじめがバレるから消したんだ。
ふとエイトの言葉を思い出した。
『生きのびるためにはね、助けてもらうか、逃げるかだね。これができれば勝ちだよ。』
今は逃げることができたから、わたしの勝ちだね……。
と、思ったんだけど教科書を開くと、またもや落書きされていた。
バカとか、うざいとか、書かれている。教科書から臭うのは……タマだ。
先生に言って助けてもらおうか……。でも臭いが証拠なんて誰も信じないよね。じゃあどうすればいいの。
エイトの言ったことを思い出した。
『後は……戦う事かな』
わたしは、覚悟を決めた。エイトの能力を信じて戦う!
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