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休み時間、わたしは落書きされた教科書を持ってタマの前に立った。 「この落書き、あなただよね」 「何でわかんのさ。証拠でもあんの」 「証拠なんていらない。あなたがやったのは、わかってるから」 「あたしじゃないから。舟虫じゃね? それより金持って来たか。放課後に体育館裏で待ってるからな」 タマはそう言ったきり、わたしから目をそらして窓の外を見ていた。 不思議とその日は、もうタマグループから嫌がらせを受けることはなかった。その代わりか、他の友だちがタマグループに悪さをされている。 あの子たちは、昨日までのわたしだ。みんな、何で逃げないの? 助けあわないの? 戦わないの? わたしも何をしていいか、わかんないけど。でも、わたしは、決めたの。逃げて、助けてもらって、そして……戦う。怖いけど戦う。そのためにエイトは能力を貸してくれたんだから。 放課後、わたしは体育館裏に行った。エイトの言葉を思い出しながら。 『詩乃ちゃん。大丈夫。君はきっとうまくやれるから。ぼくを信じて。それから、自分を信じて思う通りにするんだ』 胸が熱くなる。これがエイトの闘志なんだ。 昨日と同じ。 タマは、野ざらしのパイプ椅子に座ってる。そのまわりに舟虫や子分。5人いる。 昨日と違うのは、タマがヘラヘラしていないんだ。 「詩乃、金は持ってきたか?」 タマは、脅してきた。何か、臭いが変だ。教室でいる時のタマの臭いじゃない。 「ごめんなさい。お金はありませーん」 わざとらしくていねいに答えた。タマから強い臭いが噴き出た。 これって、怒ってるんだ。タマが怒ってる臭い! 「ふざけんなよ。お前らちょっとこのワンちゃんに(しつけ)を教えてやんな」 タマのひと言で5人の子分が、わたしに襲いかかって来た。 まず逃げるんだ! わたしは子分が、殴ってきたり掴んできたりするのを走ったり、フットワークでよけた。誰一人として私に触れることはできない。 これが、エイトの足の力! やがて5人は、はあはあと苦しそうになる。足元がフラフラしてるし。殴ろうとして、振りかぶろうとする手が上がらない。 みんな疲れたんだ。汗の臭いだらけ。 ひとりひとりと地面にへたり込んでいく。 「わおーーーーん!」 自然と遠吠えがでた。自分を信じて体の動くままにまかせる!
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