犬を盗む

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 優矢の結婚相手は、同じ会社の女性だった。同じ部署になったことはないが、社内サークルで知り合ったらしい。 「知ってるかな。第三事業部の藤野朝美なんだけど…」  私は二年前に転職するまでは、優矢と同じ会社に勤めていた。その女性のことも、名前と顔だけは知っている。  優矢の口は、ぺらぺらと滑り続けている。 「誰かから俺達が結婚するって聞いたんだと思った。うちの会社の誰かと、まだ連絡取ってるんだろ?」 「まあね」 「お前もあんなパワハラくらいで会社辞めることなかったのに。知ってるだろ、うちの会社、今期は経常利益が予想を大幅に上回る黒字だって。賞与も上乗せされるってさ。そっちは仕事どう?給料とか、やっぱ下がったよな」  プードルがク~ンと鼻を鳴らした。  お腹が空いたのだろうか。眠くなったのだろうか。 「構わなくていいよ。ハウス!」  優矢はプードルをケージに入れた。
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