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三
その晩、誠は蒼と共に双子の寝室で床に就いた。
蒼は気を遣ってか、誠を蘇芳の寝台には寝かせずに、自分の寝台で眠るように促した。
蒼の寝台の中で、誠は中々、寝付く事が出来なかった。
蒼の微かな匂いのする寝台は、安心する物ではあるのだが、蘇芳の残像が瞼の奥にチラつくのだ。
黒水晶の濡れたような瞳、細い首筋、白い鎖骨、兄に縋りつく甘い声。
誠はモヤモヤと気分が落ち着かなかった。
蒼は既に眠りに就いているようだった。幽かな寝息が聞こえてくる。闇の中、彼の寝息の他に、時を刻む時計の秒針のカチカチという音も、自分の鼓動も耳に響くようだ。
しかし、誠はいつの間にかウトウトとし始めて、いつしか意識が薄れて行くのを感じた。
眠りの世界へと、入って行った。
その世界の中にも、蒼と蘇芳の双子が曖昧に側に居るような気がしたが、誠はいつしか深い眠りへ落ちていた。
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