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 現れた蘇芳は、和服ではなく白とシアンブルーのストライプのシャツに、濃紺のバミューダパンツ姿であった。 「兄さん。熱が下がったみたいだ」 「それは良かった」  蒼は弟の姿を見て頷いた。  誠も蘇芳に微笑みかけたのだが、蘇芳は誠の方を一瞥する。それは鋭い視線だった。誠はやはり、彼の事が少し苦手だった。  機嫌を取ろうとすると、同情など要らないという眼で訴えてくるのだった。今にも叫び出しそうな容貌をして・・・。  誠もパジャマから、深緑色のシャツと白いスラックスに着替えた。    そうしている間に、蘇芳は誠の存在を無視して、蒼と話をしている。内容は、蘇芳の病気のことだった。  時々、蒼が誠にすまなそうな視線を送っていた。 「念の為に病院へ行って来いよ」 「えー、もう大丈夫だよ」  双子の話し声は、誠の耳の奥でザワザワと不愉快な音を立てた。  その時、誠は初めて自分が蘇芳に嫉妬していることに気付いた。それは蘇芳も同じ感情なのか、この屋敷に来てから蒼と誠は余り口をきいていないことに、急に不安になった。  せっかく泊まりに来ているのに、蒼を蘇芳に取られっぱなしだ。もう齢十四歳になるというのに、何だか大人気ないような気がした。
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