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   誠と蒼は二人で庭に出た。  鬱蒼とした木々の間を、縫うように歩く。   桜に椿、木蓮に金木犀、紅葉の木が濃い緑の葉を茂らせていた。 「誠、蘇芳の事は悪いと思っている。俺は蘇芳を大切に思ってる。見苦しいところとか、あるかも知れないけど、ごめんな」 「別に大丈夫だよ。双子なんだから、当然だろ」  蒼が突然、蘇芳の話を持ち出したので誠は咄嗟にそう言ってしまった。  本当は、蒼の口からその事実を聞くたくなかった。 「蘇芳は二十歳まで生きていられるかどうか分からない。俺がしっかり、面倒みないと。双子なのに何でこんなに境遇が違うんだろう」 「今更だけど、蒼が蘇芳の事を、そこまで思っていたなんて知らなかったよ」  誠は今言った言葉に後悔したが、もう遅かった。  蒼は立ち止まって、俯いてしまった。 「ああ、俺はいつもいつも蘇芳のことを思っているよ。蘇芳とは一心同体なんだ。俺は、蘇芳の為なら、どんな事でもする」  そのことを聞いた誠は、一瞬、金縛りに遭ったかのように、動けなくなった。蒼の口から、心底聞きたくないことだった。  草花の生い茂る庭は時折、雀の啼く声が聞こえてきた。軽快な啼き声は、ワルツを歌うようであった。  見上げた空は、明るく晴れて、セレストブルーの大気が流れた。雲は、家々の隙間から現れた千切れ雲である。きっとその下には、入道雲がある。  夏真っ盛りという風貌だ。 「俺達も散歩に出かけないか?蘇芳は多分、一時間以上帰って来ないと思うから」  蒼は空を見上げながら言った。誠は頷くと、二人は屋敷の古めかしい門扉を出た。
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