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校舎の中は何となくひんやりとしていた。
当直の教師が何名か居て、誠も蒼も彼等に挨拶をした。そして、廊下に出ると蒼のクラスの担任の女性教師に出くわしたので、図書室の鍵を貸してもらうことにした。
「八坂くん、夏休みは本ばかり読むの?」
彼女は、蒼に向かって微笑んだ。
「そうですね。最近、ファーブルの昆虫記、に凝っているんです」
「そう。良いわね」
蒼は軽く会釈をした。
教師は誠にも微笑みかけた。彼女は、誠のクラスの国語教師でもあるのだった。
「越智くんは?」
「え、僕は蒼くんから本を借りているんですよ。彼の家も図書室みたいですから」
「そう。ところで八坂くん、弟さんの具合はどうなの?」
「ええ。蘇芳はこの前まで夏風邪で伏せってましたが、大丈夫です。念の為に今日、病院へ行かせましたが・・・」
「お大事に」
「ありがとうございます」
教師と別れた誠と蒼は、鍵を持って、長いリノリウムの廊下を渡り、校舎の奥まった場所にある図書室へと向かって行った。
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