1人が本棚に入れています
本棚に追加
五
その日の夜、誠は一人、座敷で眠る事になった。
蘇芳が自分の部屋で、蒼と二人でいたいと言ってきかなかったのだ。蒼は、蘇芳の夏風邪がまだ完全に治っていないので、反対したのだが、蘇芳は言い出したらきかない少年である。
誠は、我儘な蘇芳に少し腹を立てながらも承知した。しかし、蒼と蘇芳は似ても似つかない双子だ。
少なからず、誠は少しだけ蘇芳に敵意のような感情を抱いた。
静かな屋敷が、夜九時をまわったところであった。誠は一人きりで、昨日まで蘇芳が使っていた座敷に床に就いていた。
流石に蘇芳が使っていた、寝具は変えたのだが、違和感があった。
先日、蘇芳が誠にかざして見せた日本刀が、美人画の掛け軸の下に鎮座していた。誠はそれが気になったが、手を触れる事は出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!