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少しの間、座敷で誠は正座をして待っていると、何やら刀の鞘のような物を持った蘇芳が現れた。
「お待たせ」
呟くように、囁くような声音で蘇芳は言うと、鞘から日本刀を抜いた。
刀は百年の歳月を費やした、この屋敷の家宝らしかった。その年月を感じさせない程、青白く冷たく輝いている。
白銀の刃が、証明もないのに闇を照らすようにギラリと光った。
「この刀はね、何百人もの血を吸ったそうだよ」
蘇芳は微笑を浮かべて恍惚と語った。
「そんなこと、きいてないよ」
すると蘇芳は、刃の切っ先を誠に向けた。正気だろうか?
以前にも、この屋敷へ来た時に、蘇芳が鞘に入ってこの刀を見せたことはあったが、刃を抜いたところは初めて見た。
「それ、本物だろ。危ないからしまえよ!」
「なかなか美しいでしょう?」
蘇芳は誠の注意など、全く聞く耳持たずで、話を逸らした。
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