2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
第6話
帰宅すると、相変わらず柴犬は俺のベッドの上で寝ていた。
ってかコイツ、くつろぎすぎだろ。
動物としての警戒心はないのか。
まあいいや、と割り切り、皿の上に買ってきたエサを盛り付けると、柴犬はノソリと起き、ゆっくりとベッドから降りて、ボリボリとエサをかじり出した。
――そんな姿に、やたら愛くるしさを感じてしまったが、「これはあくまで慈善活動だ」と自分に言い聞かせた。
*****
あれから三日が過ぎた。
相も変わらず、例の柴犬は我が家に居付いている。
何度か家から無理やり追いだそうかと試みたけれど、そのたびに無垢な瞳で見つめられ、なかなか実行できないでいた。我ながら甘い。
そしてなぜか、妙に俺になついている。
ベッドに入ると、寄り添うようにペタリとくっついてくるし、風呂やトイレに入っている間は、俺が出てくるまで常におすわりしながらドアの前で待っている。
……むぅ、日に日に可愛さが募ってくる。なんて健気なヤツだ。
あの時の彼女にも、こんな健気さがあれば……。
******
柴犬が住みつきだしてから一週間が経った。
本当に不思議なのだが、いまだにこの犬はニンニクくさい。
普通の犬用フードをあげているのに、口を開けて「ハッハッ」とやるたびに、ぷーんとニンニク臭が漂ってくる。
この柴犬は確かに可愛い。顔も整っているし、行動も愛くるしい。
でも、ニンニクにトラウマがある俺としては、ニオイがするたびに嫌気が差してしまう。
ごめん、お前に罪はないんだけど、このニオイだけは無理なんだ……。
最初のコメントを投稿しよう!