第5話

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 近所のコンビニでドッグフードを購入し、家路へと急ぐ。  すると、犬を散歩させている50代くらいと思しき女性が、何やら喚きたてていた。 「こら、ハッピー! そっち行っちゃ駄目でしょ!」  どうやら、飼い犬が自分の思い通りに動いてくれないようだ。 「だからそっちじゃないって、こっちよハッピー!」  どうでもいいけど、家ならまだしも、外なのに人と話すテンションで犬と会話しているご婦人の姿は、なかなかシュールだ。 「ちょっとハッピー、なんで言うこと聞かないの?」  多分、犬には人間の言葉を理解できないからじゃないかな。  そんな当然の理屈が喉元まで出かかるも、呑み込んだ。 「あーあ、いいんだねハッピー。じゃあ、今日はおやつあげないから」  飼い主という立場をフルに活かした、全然ハッピーじゃないパワハラを目の当たりにし、なんだか気が滅入ってきた。  名は体を表す、の逆をいってるけど、頑張れハッピー。  俺にはそれしか言えない。
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