後神

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後神

(そう)()は放課後、今日も図書室に来ていた。  本の背表紙に指を滑らせながら本棚を移動していく。  そしてお気に入りの場所で颯太は立ち止った。  そこには妖怪、お化け、古今東西の怪物達が表紙を飾っている。  颯太は一つ一つ丁寧に本のタイトルを追う。 オオカミ男……ジキル博士とハイド氏……ドラキュラ伯爵。 『う〜ん。そんな気分じゃないかな』 皿屋敷……百物語……四谷怪談。  ふと、颯太の視線が止まった。  颯太が通う小学校の図書館はほとんどの棚が同じ高さになっている。  だから背の低い本は本の上に少し隙間が空いている。  その隙間に一冊の本が収まっていた。  他の本に比べて古そうで、背表紙にはタイトルが書かれていなかった。 『なんでコレだけこんなところに?』  颯太はその本を手に取り、表紙を見る。  背表紙と同じでタイトルらしきものも、作者の名前も見当たらない。  颯太は表紙をめくってみた。  最初に日本の妖怪の名前がズラリと並んでいるのが見えた。 『え〜っ!? こんな本あったんだ!』  颯太はその本を持って図書室のカウンターへと向かった。  だが、そこには誰も居ない。  いつもならココで本を借りる手続きをしてもらえるはずだったのに。  誰か来ないかと颯太はキョロキョロしながら待った。  その時、図書室のドアが勢い良く開いた。 「颯太! やっぱりここに居た。早く行くよ」  入ってきたのは姉の(もも)()だった。颯太は図書係の人ではなくガッカリする。 「ちょっと待ってよ。いま借りるところだから」  百子は「もうっ!」と足音荒く颯太に近づく。 「誰もいないじゃない! 良いから早く来なよ。みんな待ってるんだよ!」  颯太は手に取った本に視線を落とし、そして周りを見回した。  図書室には颯太と百子の二人しかいない。 「来ないなら私だけ先に行くからね!」  そう言って百々は図書室を出ていく。  颯太は一瞬迷ったが本を自分のランドセルにしまい、百子の後を追った。
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