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颯太と百子は自転車を走らせ、たどり着いたのは山の中だった。
登山道から外れ、人々に忘れられたかのようにヒッソリとたたずむ公園。
ここで遊ぶ子を他に見たことはない。颯太達の秘密の遊び場。
その公園の入り口に3台の自転車が止まっている。
『もう、みんな来てるんだ』
颯太の心はうれしさではずんだ。
ペンキのハゲたすべり台。座るところが外されて支柱だけになったブランコ。サビだらけの鉄棒。
その先にあるボロボロの東屋。そこに3人の男の子達が見える。
長男の凛斗が携帯ゲーム機をしているのを後ろから次男の煌介と三男の翔がのぞき込んでいた。
「何のゲームしてるの?」
そこに百子も加わる。
颯太ものぞき込もうとするが、みんなが邪魔でよく見えない。
仕方なく颯太は凛斗の向かいに腰を下ろし、四人を眺める。
『せっかくみんなで集まったのに……つまんない』
颯太はため息をつく。そして学校で借りてきた本のことを思い出した。
ランドセルの中をかき回し、颯太はお目当ての本を取り出す。
何も書かれていない表紙。その後には沢山の妖怪・お化けが並ぶ目次。
その手が好きな颯太には見慣れた名前が並んでいる。
目次を見終わる頃、翔が颯太の本に気が付いた。
「颯くん、なにその本!?」
翔は颯太の隣に駆けよってのぞき込んできた。
「あ~! この妖怪、ぼく知ってる!」
その声に煌介と百子もやってくる。
「なにコレ……」
百子は顔をしかめる。
「猫又だよ! 猫のお化けなんだよ!」
翔は自慢げに説明した。それでも百子のしかめっ面は変わらない。
「猫又位知ってる! でも絵がなんか変。可愛くない」
描かれた絵は今時のものではなく、もっと抽象的なものだった。
「これは昔に描かれたからこんな絵なんだよ」
颯太はそう言いながら、父親にもらった妖怪の本の事を思い出していた。
『たしか、江戸時代の絵だって言ってたっけ』
颯太は簡単な猫またの紹介文を読み終えるとページをめくった。
そのページを見て、五人は目を丸くした。
そのページは妖怪の名前と絵しか描かれていなかった。
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