後神

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 颯太は気が付くと知らない場所で倒れていた。  百子や凛斗、煌介、翔、全員が倒れている。  どこかの部屋のようだ。それもボロボロの廃墟の一部屋。  窓はなく、壁紙がはがれ、床のタイルのほとんどが割れている。  みんな気が付くと何も言わずに部屋の真ん中へと身を寄せ合った。 「どうなってんの……」  煌介がつぶやくが誰もそれに答えられない。  チカチカと電灯が点滅する部屋の中、ほこりの匂いや、何か他の匂いが颯太の不安をかりたてる。  部屋には窓がなく、本来はドアがあるはずの場所には何もなく、ただポッカリと廊下に続いている。  この部屋よりもなおうす暗く、不気味な廊下へ。 「早くこんなところ出よう?」  百子が勇気をふりしぼって言った。    みんなが目を見合わせて、そろそろと部屋の出口に向かう。 「ちょっと、押さないでよ!」  先頭の凛斗が抗議する。 「凜斗が一番お兄ちゃんなんだから、凜斗が前行ってよ!」  煌介がそれでも凜斗を押す。 「私も怖いのヤダ!」  百子もそう言って煌介の後ろに隠れる。 「お姉ちゃん! 置いてかないで!」  みんなでギャーギャー言いながらも少しずつ進んでいく。 「ま、待って……」  みんなの騒ぎ声で翔の言葉は誰にも届いていなかった。  たまらず翔は怒鳴る 「待ってよ!」  その声に4人とも振り返る。 「翔、早くおいで」  怖いながらも凜斗は翔に優しく声を掛けた。  翔はその言葉に首を振る。 「翔! 早く来ないと置いてくぞ!」  煌介が翔をせかす。 「う……後ろに……」  4人が一斉に後ろを振り返る。  部屋の出口は先ほどと変わらず、うす気味悪いが特におかしな点はない。 「違うの!」  翔のパニック寸前の声にみんながもう一度翔をみる。 「僕の……後ろに誰かいるの……」
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