新しい家

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 多頭飼育崩壊からレスキューされたミックス犬の里親になった。ダックスフンドとチワワの雑種である。両親それぞれの特徴を持って生まれてきたので、胴長短足で目はまん丸で愛嬌たっぷりだった。  彼の年齢は5歳らしいということだった。生まれてから今まで外の世界を知らずに、部屋の中で大勢の兄弟たちと身を寄せ合って生きてきた。我が家に来た当初はとても慎重で臆病で常に震えているような子だった。与えられたオモチャにも興味を示さなかった。部屋の隅で気配を消すようにじっとしている犬だった。  しかし、家族からたくさんの愛情をもらい、弱い彼は彼なりに、自分がとても愛し愛される存在だと認識するようになった。地蔵のように動かない犬だと言われていた彼が、いつしか自我が芽生え、短くも文句を言うようになり、甘え上手ですっかり家族の一員となった。  弱いというのは、自分のたてた物音にさえびっくりして飛び上がるほどの気の弱さだからだ。とても家族を守る番犬とは程遠く、むしろ家族に守られる側となっている。  困ったことももちろんある。自分のフンを食べてしまうことだ。子犬ではない、彼はいい歳をした成犬なのにである。だが、多頭飼育崩壊の家で育った子はそういったことは珍しくないそうだ。彼がフンをするタイミングを見逃さず、すぐさまそれを片付けるスピードが必要である。そのスキルが次第に身につくようになったが、今のところ勝敗は五分五分といったところだろうか。  彼がやってきて3年が経った。8歳になりシニア犬の仲間入りである。顔の毛に白髪が混じるようになった。そして今日も愛情に満ち溢れた可愛い目で家族を見つめてくる。癒し癒される愛おしい存在、私たち家族は彼を迎え入れたことを心から良かったと感じている。
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