10人が本棚に入れています
本棚に追加
(よかったね、猫ちゃん)
大地の腕の中に納まった猫に、豆丸はうれしそうに話しかけた。
(ちょっと、吠えないでよ。このバカ犬)
(どうして? すごくハッピーな気分だよ! 大地くんはやさしいでしょ。ボクの自慢のご主人さまだよ!)
(あんたに言われなくてもわかってるわ。この私が目を付けたんだから!)
(えへへ)
(どうしてあんたが照れるのよ)
「ああ、ごめんね。豆丸」
急に吠え出した愛犬に大地は視線を向けた。
ヤキモチを妬いているのかと思ったが、豆丸はうれしそうにぶんぶんとしっぽを振っている。そのうえ、つぶらな瞳はオヤツを強請る時のような輝き方をしているのだから意味が分からない。
「きゅうん」
「豆丸、それはどういう意思表示なの?」
困惑する大地の膝に、豆丸はぽんと前足をついた。
(大地くん、大地くん! ボクは怒ってるんじゃないんだ。よろこんでるんだよ)
けれど、豆丸の言葉を大地は理解できない。
「ごめんな、猫ちゃん。飼ってあげられたらよかったんだけど、うちは豆丸がいるから難しいかなぁ。なんか変に興奮してるみたいだ。母さんも反対するだろうし……」
塀に戻されると察した猫は、大地のジャージに爪を引っ掛け抵抗した。
最初のコメントを投稿しよう!