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(ねぇ、見てみて。あの人が大地くんのお母さん、厳しいけどすごくやさしいんだよ)
(私には怖いだけの人に見えるんだけど)
(そんなことないよ。上手に待てができるといっぱい褒めてくれるんだから)
(それは飼い犬にとって普通のことじゃないの……?)
(じーっとこっちを見てる女の子が愛海ちゃん。休みの日は愛海ちゃんも散歩に連れてってくれるんだよ。あとね、まだ帰ってきてないけどお父さんもいて……)
あまり近付かないよう言われた愛海は、リビングの壁から顔だけ出して二匹を眺めた。その肩に手を置き、母も同じように体を傾ける。
「ママ、なんかお話してるよ」
「そうね。落ち着くまでそっとしておいてあげてね」
「うん!」」
「シャー!」
二人の前で猫は、自分の顔を舐めてくる豆丸に牙を見せた。
「豆丸は猫ちゃんのことを気に入ってみたいだけど……」
「肝心の猫ちゃんが豆丸に威嚇してるねぇ」
「全然めげない豆丸すごいね」
「豆丸はそういうところもお兄ちゃんに似たのよ」
(だいじょうぶ。ここは安全だよ。みんなやさしいでしょ。怖くない怖くない)
(私が怖がってるのはあんたよ!)
(え? なんで~?)
(なんなのよ、このバカ犬。こいつがバカなの? 犬はみんなこうなの? こんなやつに私は……)
(え? なぁに? どうしたの?)
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