飼い主によく似たわんこ、大福餅を拾う

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 お腹いっぱい食べられて、ごわごわになった毛を梳いてくれて、ふかふかの寝床がある。まだ気持ちが落ち着かないけれど、思った通りここは中々の環境だわ。と、猫は満足げに目を細めた。 (ねえねえ、君の名前はなんていうの?)  いちいちクッションが話しかけてくるのがマイナスだけれど。 (そんなの忘れたわ。いいの。私はここで新しい名前を貰ってしあわせに暮らすのよ) (素敵だね!) (あんたは別。早くどっか行ってよ! ここは私だけの楽園よ。私はみんなの愛を独り占めするの!) (どうして? みんなで仲良く暮らそうよ) (いやよ。私は犬が大っ嫌いなの!  犬のせいで……。言うことを聞かないわがままな私よりも、芸ができて愛想のいい犬の方がいいからって、私は捨てられたのよ)  だんだん弱弱しくなっていく猫の声に豆丸は鼻を寄せた。舐めたら思い切り怒られたから、今度は頬ずりにしてみる。 (だいじょうぶだよ。大地くんも愛海ちゃんもお母さんもお父さんもそんなこと言わないよ! なにより、ボクが君をひとりぼっちになんかしないよ) (……なんで) (ボクもご主人さまに捨てられたことがあるんだ。ボクは大地くんに拾われたんだよ) (あんたも……) (ボク、前のご主人さまに捨てられて寂しくて悲しくてとてもつらかったんだ。置き去りにされた箱の中で泣いてたら、大地くんがボクを見つけてくれたんだ)  猫は言葉を失った。何の苦労も知らないバカ犬だとばかり思っていたのに、同じ辛さを味わっていたなんて考えてもいなかった。 (寒さに震えていたらね、大地くんがさっきみたいにぎゅーって抱き締めてくれて、あったかくてうれしくて) (知ってるわよ。大地くんはあったかくてやさしいわ) (でしょ。だからボクも、大地くんと同じことがしたかったんだ) (そう……)
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