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わたしはトボトボとソファーに戻る。
それから、異変が起きた。
心臓がバクバクするのだ。ミユちゃんの感情が伝わってくる。おびえている?
なにかミユちゃんに危ないことがあったのかもしれない。
そして、ミユちゃんの痛みが伝わってきた。わたしの心臓が痛くなり、息が苦しい。耐えられないほどの痛みだった。きっとミユちゃんはもっと痛みがあるに違いない。
ミユちゃんに、なにかが起こっている。
「キャン!キャン!」
わたしはミユちゃんのママに向かって吠えた。ミユちゃんになにがあったら…。わたしは居てもたってもいられなくなった。
「どうしたの?」
ミユちゃんのママがわたしに近づいてくる。わたしは外に向かって吠えた。
「あれ?ミユは??」
ママは玄関をそっと開ける。
「どこにるの!?」
わたしは、ママのすきを突いて、外へ飛び出す。
ミユちゃんがどこにいるかはわかっている。公園だ。
暗い夜道を走って、公園に着くと、街灯の下にミユちゃんがいた。
ホッとしたものの、ミユちゃんの目の前には見知らぬ男性がいた。
そうか、こいつがミユちゃんをおそったのだ。わたしは猛然と男性にかみつこうとする。
「待って!なにしてるの!」
ミユちゃんがわたしに向かって手を広げる。
「この人はわたしの大切な人だよ」
え???ミユちゃん、何を言っているの?
だって、おびえていたじゃない?痛みも感じていたじゃない?
ミユちゃんがわたしに近づいて、小さな声で言う。
「ロコ…。あの人はわたしの好きな人なの。今日、自分の気持ちを伝えようと思って、公園に来てもらったの。ドキドキしすぎてたいへんだった。そしてダメだったんだ。ふられたの。心が痛いよ、ロコ…」
わたしってダメだな。
ミユちゃんの気持ちをまったくわかっていなかった。
「ありがとう、今日は時間をとってくれて」
ミユちゃんが相手に感謝を伝える。
「ロコ、帰ろう」
ミユちゃんはわたしに近づいてきた。その目には涙があふれていた。
「悲しいよ…つらいよ…」
わたしに、ミユちゃんの感情が伝わってくる。
感情を知るだけじゃなくて、わたしにできること。
わたしはミユちゃんの腕になかに体を押しつける。
ミユちゃんのほっぺを優しくさする。
元気をだしてほしい。
感情を知るだけじゃダメなんだね。
感情に寄り添うことが大事なんだ。
わたしはミユちゃんのことをもっともっと知ろうと思う。
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