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――香織は頭がよくてしっかりしているけど、直樹の方がかわいげがある。
昔、親戚に言われたことがあった。暗に「お前は子供らしくない、かわいくない」と言われたとわかるくらいには聡い私だった。
明るく人当たりがよい弟は、学校の成績はあまりよくなかったが、いつも周りに人がいた。
「姉ちゃんは強いね」と言われた時、「ううん、今すっごく不安」と答えた方がよかったんだろうか。
だけど思考は実際、先のこと、先のことを考えてしまう。同情より次に何をするべきか、現実を優先してしまう。結果、冷たいと言われる。わかっていても、持って生まれた気質は変えようがない。
過去には、結婚を考えた人もいた。けれど「好きな人ができた」と別れを切り出された。
最後に彼は、「香織は強いから、一人でも生きていけると思う」と言った。
「姉ちゃんは強いね」と言った弟は、そんな私の過去を知らない。言ったところでどうしようもないし、今は母のことが最優先だ。
この家で一緒に過ごした頃はなんでも言えたのに。言えないことが増えていく。
スマホをたぐり寄せる。ネットを開くと、母の手術の間、検索していたページが残っていた。病気、入院といったワードを調べているうちに目についたもの。ネット上での介護の相談。
「同居している高齢の母をグループホームに入れようとしていますが、『施設なんてかわいそうだ』と妹が言います。そのくせ自分は遠方に住んでいて、めったに実家に帰ってきません。
私達家族も介護の限界です。お金も出さず、口だけ出す妹に嫌気がさしています。どう言ったらグループホーム入居を納得してもらえますか」
ああしたらいい、こうしたらいいと答えが続いていくが、ろくに頭に入ってこなかった。
私と弟も、そんなふうになるんだろうか。
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