面会

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面会

 夜が明け、あっという間に面会の時間になった。 「あ、つながった。おーい」  弟がスマホに手をふる。画面の向こうに、薄いグリーンの入院着を着た母がいた。 「お母さん、大丈夫!?」  自分でもびっくりするくらい、大きな声が出た。 「ごめんねぇ、心配かけて。二人とも仕事あるのに……」  のどが痛そうな母の声。まぶしそうにこちらを見る眼差し。 「いいって、お母さんのためなんだから」  弟の声が耳を通り抜けていく。  私は、言葉が出てこなかった。胸からのどをふさぐ塊のようなものがあって、話せない。  画面の中の母から目が離せなかった。  いつの間にこんなに小さくなっていたんだろう。痩せて、真っ白な顔をして、死んだおばあちゃんみたいになっている、母。  いけない、泣くな。  なんだってこんな時に、母の前で。  弟だって、心配するだろう。私は強い姉だとふるまってきたのに。 「俺もだけど、うちの奥さんも心配してたよ。手術うまくいって、こうやって話せるくらいになってよかったね」 「そうね。先生たちのおかげだわ」  母はまばたきして、私の方に焦点を合わせた。 「あら、香織(かおり)、やせたんじゃない?  だいじょう」 「ぶ」を言い切らないうちに――母は咳き込んだ。
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