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そんなふうに年月が過ぎ、三十五を過ぎたころ出会ったのが、四つ年下の亮介だった。
そのころ通い慣れていたスポーツジムで、開講前のスタジオレッスンの列に並んでいたときだった。毎週同じ顔ぶれの多いなか、見慣れぬ顔だった彼は一人でおどおどと周囲を見回したあと、近くにいた私に話しかけてきた。
「あの……すみません。このプログラム女性限定なんですか?」
「そんなことないですよ。今日は来てないみたいだけど、いつも参加されている男性もいますし」
そう私が答えたあとの、くしゃっと笑った顔が好印象だった。
それ以降、ジムでお互いを見かけるとどちらともなく話すようになり、私は亮介の内面の柔らかさに急速に惹かれていった。年下のくせに包み込むような。自分には自信がなさそうなのに、私のことはなんでも許してしまうような。
恋に対する私の怯えや苛立ちは亮介の空気に解きほぐされていき、特別な関係になるまで時間はかからなかった。
亮介は、私の徹底した避妊への意識を、持ち前の鷹揚さで理解してくれた。一緒にいると、安心できた。
ともに時間を過ごすなかで、戒めは徐々に解けていき、やがて思えるようになった。
この人の子なら、妊娠したい……かも。私はそれを亮介に、包み隠さず正直に伝えた。
「それって、僕と結婚してくれるってこと?」
プロポーズは、彼らしい言葉だった。
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