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雨の夜
もうすぐ12歳の誕生日を迎える悠河が、はぁ、と息を吹きかける。
冷えた窓が白く曇り、横殴りで吹きつける雨を覆い隠す。
待っているのに。
約束したのに。
自分をここから連れ出してくれると。
何度も携帯の画面を覗く。何も起きない。
頭を窓に預け、悠河は膝を抱えて目を閉じる。見えなければ、知らないと同じ。なかったことと同じにできるような気がした。
「俺がなんとかするから」。その声が頭にこびりついて、離れない。
タオルケットを頭からすっぽり被って膝を抱える。
カーテンの隙間から見える外は薄明るい。
容赦なく朝はやってくる。
いまも変わらない。雨の日の朝は、待っていたあのひとを思い出す。
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