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再会
まだ春の彼岸だというのに、気温の高い日が続いている。
川沿いにあるシルバーショップのアルバイト・篠木悠河(しのきゆうが)は入り口で来店客へサービスの団子を焼く。
なぜシルバーショップで団子なのかぼーっと考えながら、通りの様子を伺う。この日は商店街のイベントで裏通りも人出が半端ない。
「悠河くん、そろそろ変わろうか? ずっと七輪の前暑いでしょ」
「あっ、はい」
オーダー用のタブレットを片手に、店長の星夜が声をかけてくる。まだ20代というが、技能士の資格持ち、しかも実質のオーナーと聞く。
まだ「子供」の悠河に星夜は恐ろしく仕事ができるように見え、歩み寄られると逆に距離を置いてしまう。
「いま七輪にあるの、焼いたら」
視線が合わないぎりぎりのところで答えると、星夜はあとで声をかけてくれと、言って作業場へ戻って行った。
17歳の悠河は、通信で高等課程履修している。このシルバーショップでバイトを始めたのはこの春からだった。
七輪にあった団子を来店客に渡し終え、星夜を呼ぼうとしたとき、食べ終わった串を咥えた少年が声をかけてきた。
「ねえ、あのさ、間違ってたらごめんだけど。悠河くん、じゃない?」
「え、そうだけど……」
悠河の差し出したゴミ箱に串を捨て、少年は耳のイヤホンを外して向き直る。
「俺、楓。憶えてるかな?」
ふんわり軽くカールした髪。柔らかい笑顔。身長は随分伸びているけれど、出会った時と変わらない。忘れられない。
彼だった。
「うん。憶えてる。会ったよね、ずっと前、子供の頃」
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