ふたりは同じ

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ふたりは同じ

 ひとと話すのが得意ではない。過去の話など絶対にしない。そう思っていたが、悠河は楓と隣り合うと不思議に言葉が溢れ出てきた。  楓は近くに住んでいて、「そら船」の近所には詳しいようだ。コーヒー好きで、開店当初からこの店を気に入っているらしい。  終業後に待ち合わせたロースタリーは気取ったところがなく、店員も気さくで感じがいい。 「前の、あれ、銀座だっけ?」 「あー、俺、あんなお高級なお店、初めてだったからキョロキョロしちゃったよ」 「そうだっけ? 堂々としてたと思うけど。楓くん、あの頃からクールな感じで」 「悠河くん面影があるよね。鼻筋が通ってて、品があるところ」 「え? なんて?」  急に褒められるのは居心地が悪い。 「あ、劇団で子役やってたんだっけ?」 「親の方針。たいしたことないから。ていうか、聞いていい?」 「いいよ。俺も確かめたかったことある」  悠河が話を変えるように問いかけると、楓も気になっていることは同じようだった。  楓がさりげなく周囲を見回して、こちらを見る。 「ヤってたのかってこと、でしょ」 「うん」 「悠河くんも」 「そう」 「喰われて、た?」  これまではっきり発していた言葉が少し濁った。楓がこちらに気を回している感じが伝わって、悠河はゆっくり瞬きをし、窓の向こうを見る。  外からひとりの少年がゆっくりこちらに近づく。その視線は悠河の背後にすり抜けていく。  窓に大粒の雨が吹きつけ、空いたドアから雨音がふたりの耳を塞ぐ。 「飼われてたんだよ」  少年と店員の会話も、すぐ後ろのカウンターで交わされているのに、それすら届かなかった。
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