もう引き返せない

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もう引き返せない

 会うのは2度目のそのひとは、自分の発言に面食らってこちらを見ている。 「嘘でしょ」 「俺は餌だよ、生き餌。あのひとはそれに喰らい付いた(ひと)」  小さく開いた唇はわなわなと震えている。  ──このひとに会わなければ、全部フタして生きていた。  少年は唇を噛み締めながら、続けた。 「そう、思ったんだよ、その時は」
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