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「ねえダン、イライアスは?」
「いや、まだ来てないな」
今回の任務を統括するのは、同期で一番成績のいいイライアスだ。このような緊急事態の際にはイライアスの指示を仰ぐのが適切なのだが、イライアスが待機する大通りの馬車までは少し距離があるため、彼が気付いていない可能性は十分にある。
「まあ、あんなヤツ待たずにさっさとこんなヤツら憲兵に引き渡そうか。オリヴェル様を待たせるわけにもいかないし」
「確かにそうだな。俺、憲兵を呼んでくる」
「じゃあ、私はここでろくでなし達を見張っておくわ」
「おう、頼んだぞ。すぐ戻るからな」
軽く手をあげたダンは、大通りに向かって走っていく。憲兵たちは近くの派出所で待機しているはずだ。
ダンの後ろ姿を見送ったジェシカは、ふと眩暈を感じて眉間を抑える。いくら力量差があったとはいえ、一度に四人も相手をすると、寝不足の身体には流石に堪えたらしい。
いつの間にかジェシカの横に立っていたオリヴェルが、心配そうに顔を覗きこんできた。
「……大丈夫ですか。だいぶ顔色が悪い」
「あっ、すみません。ご心配には及びませんので!」
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