0人が本棚に入れています
本棚に追加
小鉄という名前をつけた。小さくても強い犬になりますようにと願いを込めた。
かなり弱っていたが、幸いなことに治らないような病気や怪我はなかった。やんちゃな子犬ではないが、元々、家にいたラブラドール・レトリバーのソラにも恐れることなく近づく犬だった。
「いい子だねえ」
声をかけると、小鉄は嬉しそうに笑う。その笑顔に父も母も夢中になった。
嘱託警察犬というものの存在を知ったのはテレビのニュースだった。トイプードルが試験に合格したというニュースを見て、父は急に張り切った。
「トイプードルができるなら、ソラなら、きっと一発合格だ」
「確かにソラは賢いけど、おっとりしてるからなあ」
「試してみる?」
私は紙コップを三つ持ってきた。
「一つは空、一つにはおやつを入れます。当たりには私が丸めたティッシュを入れます」
入れてから、床に置き、シャッフルする。
「難しすぎじゃないか?」
父が考え込む。
「まあ、お父さん、試してみて」
もう一つ丸めたティッシュを父に渡した。当たるはずがないと思っていた。
父は真剣にソラに匂いを嗅がせた。
「いいか、この匂いがどこに入っているか、当てるんだぞ。いいか、行け」
ソラはわかったというように鳴くと、紙コップの匂いを嗅いだ。一つ一つ、慎重に嗅いで、ひっくり返さないところは流石に賢い。
それから、決めたというように一つの紙コップの前に座った。
「じゃあ、開けるね。ジャーン」
最初のコメントを投稿しよう!