再会

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 開けると、そこにあったのはおやつだった。 「もう、ソラったら、食いしん坊なんだから」  声をかけられるとお許しが出たと思ったのか、すぐに食べ始めた。 「もう一度だ」  父は諦めない。私はもう一度、紙コップにおやつを入れ、シャッフルした。 「さ、ソラ、おいで」  父が声をかけたが、ソラはおやつをもらって満足したのか、自分のクッションへ移動していく。 「小鉄にも試したら」  ソラだけおやつというのは不公平だろうと思って言った。  父は小鉄にもティッシュの匂いを嗅がせる。 「いいか、美緒の匂いを当てるんだぞ。さ、行け」  小鉄はまっしぐらに一つの紙コップの前に座った。 「うんうん、小鉄もおやつが欲しいよね」  そう言って、開けた紙コップの中身は丸めたティッシュだった。  それから、紙コップの中身を母の丸めたティッシュ、父の丸めたティッシュ、私の丸めたテイッシュに変えて、何度も正解を変えて試してみた。十回、成功した時点で父はものすごいやる気になっていた。 「小鉄はすごいよ。この才能は生かさないとダメだよ」  飼い主の親バカだと思っていたけど、父と小鉄は着実に訓練を進めた。父がぎっくり腰になった後は私も巻き込まれた。  おかげで小鉄が嘱託警察犬になった時、私が警察犬指導手となってしまった。  小鉄は優秀で行方不明の子供を見つけた次は、行方不明のおじいちゃんを見つけた。優秀ということで出動回数が増えた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加