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開けると、そこにあったのはおやつだった。
「もう、ソラったら、食いしん坊なんだから」
声をかけられるとお許しが出たと思ったのか、すぐに食べ始めた。
「もう一度だ」
父は諦めない。私はもう一度、紙コップにおやつを入れ、シャッフルした。
「さ、ソラ、おいで」
父が声をかけたが、ソラはおやつをもらって満足したのか、自分のクッションへ移動していく。
「小鉄にも試したら」
ソラだけおやつというのは不公平だろうと思って言った。
父は小鉄にもティッシュの匂いを嗅がせる。
「いいか、美緒の匂いを当てるんだぞ。さ、行け」
小鉄はまっしぐらに一つの紙コップの前に座った。
「うんうん、小鉄もおやつが欲しいよね」
そう言って、開けた紙コップの中身は丸めたティッシュだった。
それから、紙コップの中身を母の丸めたティッシュ、父の丸めたティッシュ、私の丸めたテイッシュに変えて、何度も正解を変えて試してみた。十回、成功した時点で父はものすごいやる気になっていた。
「小鉄はすごいよ。この才能は生かさないとダメだよ」
飼い主の親バカだと思っていたけど、父と小鉄は着実に訓練を進めた。父がぎっくり腰になった後は私も巻き込まれた。
おかげで小鉄が嘱託警察犬になった時、私が警察犬指導手となってしまった。
小鉄は優秀で行方不明の子供を見つけた次は、行方不明のおじいちゃんを見つけた。優秀ということで出動回数が増えた。
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