0人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日は人探しじゃなくて、遺留品探しなんだ」
もうすっかり、顔馴染みになった警察官に言われた。容疑者が使っていたというタオルを渡されると、小鉄は真剣な顔で匂いを嗅いだ。
「いつもより、気合が入っているみたいだな」
「人を探すより、物を探すのが難しいとわかっているみたいですね」
そんな会話をして、担当場所の河川敷に向かった。寒い日のせいか、いつもなら子供が遊んでいる所も人がいない。
真面目な小鉄は端からコツコツと匂いを嗅ぎ始めた。ゆっくりとした動きに付き合っていると、寒くてたまらない。カイロを持ってくればよかったと思っていると、急に小鉄が早足になった。
リードをグイグイ引っ張るので、慌ててついていく。
橋の足元にはホームレスの作った小屋があるが、もう誰もいないのか、崩れかけている。
その中に小鉄は飛び込んだ。私は躊躇して、リードを伸ばし、外に留まった。
最初のコメントを投稿しよう!