俺の犬

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「かの大国の第三王子だよ」 「っ、本当か」 高貴な生まれだとは想像がついたが、まさか王子だったとは驚きだ。 かの国では王位を巡る争いが絶えないという噂を耳にしたことがある。大方内戦で負けて捕虜となったのだろう。 「ああ、ついこの間まで、王族として民衆のために戦っていたようだ」 「そんな立派なお方が、奴隷にねぇ……」 王族の暮らしぶりなど、生まれも育ちもスラム街である璃舜には想像もつかない。ただ、王子として生まれながら奴隷に落ちぶれる人生に少しばかり同情する。 璃舜の生い立ちは決して裕福ではないが、金を稼ぐ才と世渡りの術を身に付け、安酒に毎日ありつけるくらいのそこそこ自由な暮らしを送っていた。こちらの方がよっぽどマシな人生だろう。 「プライドが相当高くてな、まだ売り物にはできない。だが調教次第では、かなりの値が付くと思うんだが……どうだ?」 正直、いくらの金になるかは興味がなかった。 興味があるのは、この王族出身の男がどんなふうに堕ちていくのか、それだけだった。その瞬間を自分の目で見届けられたらと想像すると、感じたことのない情動が沸き起こった。 「俺に任せてくれ」 「……では、4日後に」 ゴートルから手付金を受け取り、交渉は成立した。
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