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夕焼けがしっとりと降ちていく。
空はとちゅうから黄金色に変わって、真っ黒な街の向こうでは、輪郭のぼやけた太陽が神々しく光っている。
学校までの帰り道、わたしは歩きながら、ひたすら遠くを眺めていた。
隣には、同級生の貝塚宝が歩いている。
「色紙のシール、猫でよかったかな?今さらだけど、桜とかのほうが卒業らしかった気がする」
わたしの顔を覗きながら質問してくる貝塚くんに「可愛いのならなんでもいいと思うよ」と、振り向きもしないで適当な返事をした。
わたし、二年二組の学級代表、琴浦さりは、三年生の送別式に向けて色紙とコサージュ作りを任されている。
そして、彼、貝塚宝も五組の学級代表だ。
委員会が終わった後、買い出しを頼まれて荷物を纏めていたら、先生が来て、たまたま教室付近にいた貝塚くんを見つけ、わたしに同行するよう頼んだ。
最悪だ。と思った。
「いやいや。なんなの?」
「え?」
「さり。こういうシールとか選ぶの好きだったじゃん。なんでそんな興味なさげなの?」
「そんなことないよ?べつに」
「もう半年も経つんだからさ、普通にしようぜ。普通に」
そう言って、半ば呆れたようなため息をつく貝塚くんの目を、わたしは決して見ない。
彼のサラリとした黒髪が揺れても、見てしまわないように、綺麗な空に目を向ける。
だって、彼は、半年前に別れたわたしの元恋人だから。
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