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「山内、パン持って帰ってるよね。どういうつもり?」
ある日の放課後、僕は麻美に呼び出された。
「言わないと先生に言うから」
「……絶対秘密にできるなら、今日の放課後話すよ」
麻美はバラすと言ったらバラすヤツだ。だからこれは賭けだった。けど。
「犬? 可愛い〜」
橋の下でタロを撫でる様子を見ると、成功したように思う。
麻美とは家が近くて、幼稚園が同じで、子供の頃はよく遊んでいた。
麻美が僕のことを山内と呼ぶようになったのはいつのことだっただろう。
だけど動物という共通事項の前で、僕たちの壁は取っ払われた。麻美は幼稚園の頃から、動物が好きだった。僕と同じように。
「飼育係なれなかったから、私が裏飼育係やってあげる。二人の方がたくさん食べさせてあげられるでしょ」
そう言って、麻美は共犯者になった。
僕たちがタロに餌をあげれば、お婆ちゃんたちは自分たちの食べる分を確保できるかもしれない。僕たちはパンの日だけ少し空腹を我慢すればいい。
家で飼えないならせめて、餌だけはあげ続けたい。それが僕たちの望みだった。
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