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飼育係の仕事が終わって、僕は学校を後にする。学校は坂道の途中にある。僕は坂道を下った。
駄菓子屋とタバコ屋を通り越して、駅を横目に見ながら橋を渡る。橋を渡り終えると、草むらを滑り落ちるように土手駆け降り、河川敷へと足を踏み入れた。
堤防の上の道とは別に、河川敷にも道がある。だけど皆はそこを通ろうとしない。ホームレスのお爺さんとお婆さんが住んでいるからだ。
橋の下、河川敷の道までの小さな草むらに、小さなテントがある。その前に小さな段ボールが置かれている。
「タロ」
ダンボールに向かって呼び掛けると、フワフワの小さな犬が顔を出した。
僕はランドセルを置いて給食のパンを取り出した。パンを置くと、タロはものすごい勢いでそれを食べ始めた。
給食のパンをこっそり持ち帰ってタロにあげる。これが僕のもう一つの飼育係の仕事だ。
給食を持って帰ることも動物に餌付けすることも禁止されている。だけど。タロは学校の飼育小屋にはいないけど、生き物には違いなかった。命の価値は平等なはずだから。
僕はタロの頭を撫でる。出会った日よりもタロは大きくなった。でも、まだ全然小さい。
早くお母さんに言わないと。ここから助け出してやらないと、タロは死んでしまうって。
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