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家に帰ると、お母さんが晩御飯の支度をしている。雨戸をしているから家中が暗い。
「明日は台風だから早く帰ってきてね」
お母さんの言葉を聞きながら、僕はタロのことを考えて気が気でなかった。
上の空の僕を促して食事を終えると、家の中が暗い分、今日は早く寝ることになった。
部屋に入ろうとすると、弟の健太がひょっこりと顔を出した。
「兄ちゃんさ、今日デートしてたでしょ。麻姉ぇと」
「してないよ」
「ウソ、橋の下にいるの見たもん」
「あれは……犬がいるんだよ」
「犬? ふぅん、今度見せて」
健太はそう言って自分の部屋に引っ込んでいった。
ベッドの中に入るけど、中々寝付けそうもなかった。
台風が来たら、あの川はいつも増水する。台風の時、お爺ちゃんとお婆ちゃんはいつもどうしていたんだろう。タロは、どうなるんだろう。
窓ガラスを雨が叩く音は、一晩中続いた。
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