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駅前の商店街。に、つながる横道に、いくつか個人商店が並ぶ通りがある。
どの商店も繁盛は、していない。が、数日シャッターが閉まっていれば、通勤通学でこの通りを使っている人々が不安に思う程度には、馴染み深く大切な店ばかりである。
そのなかでもひときわ古びた店の、擦りガラスの扉が開いた。
店から出ると、扉の脇の木製ベンチに、慣れた動作でちょこんと座る。
この店は金物屋だ。今時使う人がいるのかと思うような、THE昭和なほうきやざる、やかんなどがほどよく並ぶ。商売っ気などとうに忘れてしまったような高齢夫婦が、細々と続けている。同年代のご近所さんが油を売りにやってくるような店である。
僕は大きくあくびをした。
そして日課の、人間観察を始める。
ちらりとこちらを見てほほ笑んでくる人もいるが、たいていの人はこちらなどお構いなしにただ歩いて行ってしまう。みんな忙しない。周りを気にする余裕がないのだろうか。
だから僕は、遠慮なく人々を眺める。
小学生が声をかけてくるときは、きちんと応える。
大学生くらいの女性には愛想もふりまく。
疲れた顔の背広の男性と目が合ったら、"お疲れ様です"という表情をすることも忘れない。
いろんな人がいる。
人でないものも紛れている。
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