飼い主の責任

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飼い主の責任

 捜索願が出されないまま、10年が過ぎた。元の飼い主は、日常的に虐待していたロクでもない奴だ。コータは大雨の中、公園のブランコにポツンと座り、ずぶ濡れで泣いていた。俺が保護したとき、彼の身体には無数の火傷や傷があり、体重も平均の半分しかなかった。だから、俺が新しい飼い主になると――たっぷりと愛情を注いで、責任を持って世話をすると決めたんだ。  コータはすくすく育ち、もはや小型犬とはいえないサイズになった。元来、俺は大型犬より小型犬を、成犬より子犬を好むのだけれど、この頃は大型の成犬も悪くないと思い直している。というのも、成長して見た目が変わっても、コータの賢さと可愛らしさは全く変わらないからだ。俺の言うことを素直によく聞き、俺を満足させてくれる。こんなに理想的な犬は、世界広しといえども他にはいない。  この愛犬との暮らしは、あと5、60年は続くに違いないが、これからも俺の生活を豊かにしてくれることだろう。 【了】
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