新居

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「今日からここが新しい家だぞ」  ご主人様はそう言うと、僕をキャリーバッグから出した。窮屈だったから、うーんと身体を伸ばす。 「コータ」  振り向くと、ぱちん、と音がして、喉元に赤い首輪が着いている。新品の首輪だ、嬉しいな。 「そうか、嬉しいか」  ご主人様は目を細めて、頭を撫でてくれる。 「お腹空いたろ。ご飯にしような?」  ご飯を食べたあと、トイレの場所を教えられた。汚さずに済ませたら、また頭を撫でてもらえた。新しいご主人様は、僕をたくさん褒めてくれる。  それから、一緒にお風呂に入って、身体をキレイに洗ってもらった。 「お前の寝床はこっちだけど……」  小さなベッドをしばらく見詰めていたご主人様は、ヒョイと僕を抱えて大きいベッドの上に乗せてくれた。 「今夜は、一緒に寝ようか」  ご主人様はフカフカの羽布団をかけると、僕と額を合わせて笑った。ベッドの中はポカポカ温かくって、とっても幸せなまま、僕はぐっすり眠った。
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