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梓は私の顔を見て察したように
「びっくりした?この子、保護犬なの。前に飼っていた人がブリーダーで何回も何回もこの子に妊娠させて産ませてを繰り返したらしくて、歯がなくなってしまって、毛並みもひどくなっちゃったんだって」
私はなんてことをするんだ!と一気に悲しくなった。
お茶を出しながら梓が続けた。
「主人が亡くなって四十九日も済んだ頃、息子の日向が私を見かねてね、犬を飼おうって言ったの。市で犬の譲渡会をやってるんだって言ってね。そこにくる子達はみんな苦労して生き抜いて来た子ばかりなの。それに1匹、引き取ってあげれば2匹の子を幸せにすることになるんだって。殺処分される予定の1匹がまた、譲渡会に行けることになるからね」
初めて譲渡会に行った時、人間にかなり怯えていて、事情を聞いて是非うちで手厚く面倒を見たいと思ったんだそうだ。
命に対してかなり敏感になっていたのだろう。
殺処分なんて許せなかったのだ。
名前は"花ちゃん" 。
ゆっくり慣らしていって、今では同じベッドで寝ているんだそうだ。
梓に撫でられて嬉しそう。
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