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集落ではこてつの帰還を祝ってささやかな宴が催された。もちろん、竹朗も一緒だ。
こてつはすっかり竹朗になついてそばを離れない。本来は甘えん坊だったことを知ると、ますます恐れ入る。
「なぁ、竹朗さん、よかったらここでオラんちを手伝ってくれよ。足はすっかり良くなったが、こてつもこんなに懐いているしよ。りよを嫁にしてくれねぇかな」
竹朗はただ素直に人の役に立ちたかった。働くことは気持ちがいい。それがあまりにも踏みにじられ、何をすべきか見失っていた。
難しいことではなかった。伊勢参宮でも何でも良かったのだ。ただひたむきにやるべきことやるだけ、こてつはそれを教えてくれた。それともう一つ。誰かのためを思ってやったことを受け取ってもらえる喜びも。
竹朗は、おとっつあんの申し出を有難く受けた。
そして皆、いつまでも仲良く、おだやかに暮したそうだ。
おわり
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