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竹朗は混乱した。腕を振り振り、なんだよ、恩をあだでかえしやがって。やっぱりおめぇは畜生だ! 俺のことなんざ、はじめから何とも思っちゃいなかったんだ。と悲しんだ。
が、それも束の間、全く痛みが無いことに気付いた。あまがみだ。グイグイと、家の方へと引っ張っているようにも思えた。
「こら、こてつ。離しなさい!」
慌てふためく娘をよそに、こてつは竹朗を家の前まで連れてくる。そして解いてもらった荷物を竹朗の前にきれいに並べてみせた。
「もしや……あんたがこてつを連れてきてくれたのかい?」
「あ、い、いやぁ、俺はたまたま通りかかっただけで、こいつは自分でお役目をはたしてここまで帰って来たんでさ」
こてつは文字通り手のひらを返し、今度は竹朗の手をぺろぺろ舐めている。
「ふふふ。こてつはあなたに手助けしてもらったって言ってるわね」
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