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「た、太郎!」
思わずそう呼びかけたが、犬は振り向きもせず。それもそのはず、太郎とは、竹朗がかってに名付けたものだ。相変わらず薄汚れていたが、足取りは相変わらずしっかりしていた。
「よかった。あいつ、元気でやっているんだな……」
熱くなる目元を抑え、のどに詰まる塊を飲み込んだ。良かった。太郎は元気だ。一人でここまでやって来たんだ。とめどなく湧き上がる喜びに胸がいっぱいになる。しかし、竹朗は駆け出しそうになる足にぐっと力をこめた。
太郎には太郎の旅がある。それに、水を差しちゃならない。
「……がんばれよ、太郎」
竹朗は小さくつぶやいた。
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