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 その夜の顛末を祖母に話したら、「こっちこそ冗談じゃないわよ。いい迷惑だ」と、一言追加して憤慨していた。その怒った表情は母にとても似ていて、やっぱり親子なんだとふと思い知らされた。  結局のところ、祖母は老人ホームにも我が家にも行くことは無かった。 「これまでも好き勝手やってきたんだから、今さら他人の世話になんかならないわよ」 「お母さんは娘でしょ。他人じゃないじゃん」 「血は繋がっていたって大した付き合いもないんじゃ、他人とそう変わらんよ」 「そんなもんかな」 「そんなもんだよ」  二人の間に何があったかは知らないし、聞く気も無かった。もっとも、聞いたとしても教えてくれはしなかっただろうけれど。  私がマロンの散歩を週二回するついでに、祖母の様子を見てくる。それが、最終的な落としどころとなった。
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