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スマホの写真を整理していたら、マロンと散歩している様子を撮影した動画を発見した。違和感を覚える以前のマロンは、向かいからやって来た大型犬のグレート・ピレニーズに吠えている。白いモフモフが本気を出せばマロンなんて一飲みなのに、無謀な奴。ワンワンと吠えているその動画を見ている内に、今のマロンと声質が違っていることに気がついた。
動画のマロンは、少し低音の「ワンワン」で、全ての音に濁音が混ざっている感じ。それに対し今のマロンは、どちらかと「キャンキャン」に近い「ワンワン」だ。もちろん、これまで気づかなかったのだから明確な違いというわけではなく、「ワンワン」という音階の中で少しだけ高低のズレがあるぐらい。比較対象がなければ、私自身もきっと気づかなかっただろう。
翌日、祖母に声の違和感のことを告げたら、
「知らなかったのかい? 犬にも声変わりってのはあるんだよ」
と、お気に入りの紅茶を啜りながら言った。
「ほんとに? あまり聞いたことないけど」
「本当だってば。動物病院の先生に聞いたんだから」
「マロンはメスなのに?」
「犬はメスだって声変わりするんだよ」
「でも、声が高くなることってあるの? 普通は低くなるもんじゃないの」
「それは私に聞かれてもねえ。マロンに尋ねてみればいいじゃない」
そう言うと祖母は、「夕ご飯は食べてくだろ? カレーにするから材料を買ってきてちょうだい」と私に財布を投げよこした。散歩後に祖母とご飯を食べるのも、すっかりルーティンになった。
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