③金曜日について

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③金曜日について

●アズマ:金曜日の好きなところを語ってください! ○春哉さん:金曜日は好きというよりも救いといった感じですね。  例えるなら灼熱の砂漠に現れたオアシス、天から垂れた一筋の白い糸。  平日勤務の社会人は金曜日があるからこそ日々荒波の中をもがき続けることができるし、迫り来る〆切という壁に対峙することができているわけです。  また金曜日はゴールの役割も担っています。 〆切直前になると自分でも知らないとんでもない力を発揮することは多くの方が経験あるかと思いますが、ラストスパートというのはそれほど最強になれます。マリオでいえばスター状態です。  そして、ゴールを走り抜いたときの爽快感は言葉になりません。  自由です。もうここからは立ち止まっても座り込んでもまだまだ走ってみてもいい。本当に自由なんです。すべて許されます。華の金曜日にはきっとこう口にする方も多いんじゃないでしょうか。 「大丈夫。今日は金曜日だから」と。  さて、まだまだ金曜日の魅力について語り尽くせてはいないのですが、それらすべてを文字にしてしまうと大長編となり出版され、水曜日派や木曜日派の人々の手に渡ってさらなる確執を生むことになってしまうのでこのあたりで収めておこうかと思います。  これを読んでくれた皆様の瞳に、次の金曜日がいつもより少しだけ明るく映っていると幸いです。 ●アズマ:金曜日の忘れられない思い出を教えてください! ○春哉さん:実は一度だけ金曜日を忘れてしまったことがあるんです。  先に言い訳をさせていただくと、その頃はいわゆる繁忙期でとてもとても仕事が忙しくて曜日感覚どころか時間感覚すらなくなってたんですよ。絶え間なく目の前に〆切があったので目についたタスクを片っ端から消化している状態だったんです。  そんなある日のことでした。  同じように極限状態の後輩が「僕、この仕事が終わったら週末ライブに行ってグッズを爆買いするんです」と死亡フラグを立てているのを聞いて、え、今日何曜日? となったわけです。  思い至ったときは青ざめましたね。いつもあんなにお世話になっている金曜日を忘れるなんてとんでもない無礼を働いてしまった、と。  いますぐ切腹最中を買いに行って非礼を詫びたかったところですが、その日も忙しかったので手元のタスクを捌きながらこんなことは二度とないよう誓うに留めました。  そして後輩はその後無事にライブでグッズを爆買いし、月の給与のほとんどを溶かしてきたそうです。  その空っぽの財布と幸せそうな表情が今も忘れられませんね。
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