④ネットの世界について

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④ネットの世界について

●アズマ:初めてネット小説の世界に踏み込んだ時はどんな気持ちでしたか? ○春哉さん:初めはいろんな気持ちがありました。  自分の作品が幸運にもバズって世界規模のベストセラーになっちゃったらどうしよう、みたいな気持ちとか、プロでもないどころかど素人の文章をみんなに見える場所に置くのちょっと恥ずかしいな、みたいな気持ちとか笑 期待感とか恐怖心とかが一緒くたでした。  けど、やっぱりそれは皮算用でしたね。  初めてエブリスタに投稿した作品をドキドキしながら見守ってたんですが、誰一人として読まれませんでした。  当然なんですけどね。これまでろくにネットの世界に関わってこなかった人がひとつの短編を書いて置いてみたところでバズるどころかチラ見もされません。  今では当たり前のようにわかるんですが、いつも一定の読者がいる方は本当に日々努力されてます。  毎日投稿したり、コンテストで受賞したり、SNSでたくさんのフォロワーさんと交流したり。運だけでなんとかしようとしていた私は初心者すぎました。  ただ当時は皮算用でしたが、努力と運次第でこの世界はどこまでも新しい場所へ連れて行ってくれるものだと今は思ってます。 ●アズマ:ネットの世界では、違う自分を演じているという感覚はありますか? ○春哉さん:あ、めちゃめちゃあります笑  狙ってそれをするほど器用ではないんですが、自分の中で自分の認識が変わる、って感じですかね。  ネットの世界で何かを書き込むとき、私は完全に『池田春哉』です。  何を言ってるのかよくわからないかもしれませんが、そうなってしまいます。  もちろん根本は私ですので大部分は変わらず、なんなら書き込んでるときは自分の思うままに書いてるつもりなんですが、見返すとやっぱり普段の自分とは違うなという気がします。  まあでも現実でも同じようなものなのかもしれません。  家族に見せる自分と友達に見せる自分、恋人に見せる自分、上司に見せる自分はそれぞれ少しずつ違いませんか? そのひとつにネットの世界があるだけって感じですかね。  全部私じゃなくて、でも全部私です。  これからも池田春哉をよろしくお願いします。 ●アズマ:今後のネット小説の世界はどうなっていくと考えますか? ○春哉さん:これは難しい質問ですね。  私もネット小説の世界に足を踏み入れてまだ四年半ちょっとなので偉そうなことは言えませんが、ネット小説界はこれからも膨らんでいくような気がしてます。そうなってほしいと思ってます。  理由はシンプルで、世間のデジタル化が進んでるからです。  今は3歳の子がiPadでYouTubeを見てるらしいですね。私が3歳のときなんて木の枝持って遊んでましたよ笑  私は電子書籍より紙本派なんですが、最近の子はそうでもないそうです。どうやら電子書籍に没頭できるかどうかは子どもの頃に決まるらしいですね。  きっとこれからは電子書籍派の人たちが増えていくんだろうなと思いますし、ネットがあればたくさんの物語が読めるネット小説はその流れにうまく乗れそうだなと思います。  若者の活字離れもよく言われていますが、電子を通して活字を摂取する若者も出てくるでしょう。  それと昨今はネット発のエンタメが受け入れられやすい世の中ですよね。  たとえば音楽の世界でもボカロPとして活躍していた方々の存在がかなり大きくなってきたように思います。米津玄師さんとかYOASOBIさんとか。ネットで生まれたスターがネットの外に飛び出してさらに輝いてる。  ネット小説もいずれそうなるんじゃないかなと勝手に思ってます。  いや、もうなりかけてるのかもしれないですね。異世界転生みたいにブームも作り出してますし。  ネットの内側で花開いた才能がネットの外側で輝けばすべての人々を巻き込んだ魅力的なコンテンツになるでしょうし、この世界にはそんな才能の芽があちこちに生えていると思ってます。    以上、独断と偏見にまみれた希望論でした。  まあずっとここにいればいつかこの推論が正しかったかどうかわかるはずです。  世界の行く末を見守りながら今日も書きますか。 ●アズマ:春哉さん、お忙しい中インタビューに答えていただきありがとうございました! これにて対談は終了になります。
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