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目覚めの儀
討伐を終えて屋敷に戻るとなんとも忙しない空気が流れていた。長い廊下を従者たちが慌ただしく行き来している。
「あれっ? 西対に火が灯ってる」
雪乃が真っ先にその異変に気づいた。
「いかにも。急ぎ命様をお迎えする準備をしておる」
そう答えながら定範は倭に向き直った。
「鬼の出現が認められましたので、これより命様の『目覚めの儀』を執り行います」
倭は硬い表情で頷くと、定範とともに東対へと向かった。
渡り廊下を進み、東対に隣接する蔵
へ入ると突然空気が変わった。
霊験あらたかな修験場に来たような清廉な空気に自然と背筋が伸びる。
広い蔵の中で松明が揺らめく。
正面にはしめ縄の貼られた祭壇が祀られ、石棺守の女官二人が左右に控えていた。
定範に促され倭が祭壇に進み出た。
「お館様の神力を石棺に注ぐことで、命様はお目覚めになります」
定範の言葉を聞いて、理人は隣の雪乃に耳打ちした。
「餓鬼を倒して鬼裂を塞いできたばっかりだってのに、まだ神力を出せるってすごいよな」
ヒソヒソと話しかけてくる理人を雪乃は突き放す。
「ご当主様とあなたを同じ基準で比べるんじゃないわよ!」
倭が石棺に神力を送ると、その重い蓋がゆっくりと開いた。
「命様のお目覚めにございます」
左右に控えていた石棺守の二人が深々と頭を下げる。
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