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秘めたる想い
一方で、浄めの姫君を一目見た理人はその全てに心を奪われていた。
「78代目当主、織田倭」
倭がボソボソと名乗りを上げると、姫様は倭に微笑まれた。
『かの人の瞳の先にあるのは自分であって欲しい』という願望を、理人は自覚せぬよう無意識にもみ消す。
直属の侍女となる二人が面通しをするのを、理人は雷にうたれたかの如く呆然と聞いていた。
「姫様にはこれより現代の生活様式に慣れていただきます。私共がお手伝いをさせていただきます」
そう言って、60歳になろうかというキヨはキビキビとした動きで命様を西対へと連れ去っていき、蔵に残された者は誰からともなく本殿の大広間に移動した。
「現代の眠れる森の美女って感じで素敵でしたねぇ!」
菜々花は感嘆のため息を漏らした。
「理人殿の言う通り、大層美しい方でしたな!」
朴念仁かと思った高良までそのように絶賛している。
「そんな呑気なことを。命様は知り合いも居ないこの世界に突然一人で投げ出されたのよ? きっと不安だと思うわ」
雪乃は命様を案じている。
「でもそのために東雲家の人達が付いてるんっすよね? 古語も喋れるって奈津さん言ってたっす!」
「いつの間に石棺守の方とそんな雑談をしたの!? 右京くらいのコミュ力があれば、どの時代に放り出されても心配なんていらないんでしょうけどね」
雪乃はフウッとため息をついた。
「わりぃ! 今日俺、かなり疲れてっから先に休むわ」
理人は突然話を打ち切って、大広間を出ていった。
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